森勉(茜)
「細部は説明を読んでわかりました。でも違いがわかりません。どれが来たらどれで解けばいいのか、解りにくい気がします。どうもスッキリしないと言うのでしょうか。公式も覚えています」って。
「模試の解説を見たら理解できました。でも、試験中にそれが思いつかなかったのです。それはたしかに知っていたはずなのに」って。
「問題を見たときのテーマが見えてこない。何でこれが問題視されているのだろう。この問題はなにを訊いているのだろう。この問題の存在理由は何だろう。そもそも何でこんなことを勉強しているのだろう。結局暗記しなければいけないだけなのか。また暗記コンクールか。あとどれくらい覚えたら得意になるんだろう」って。
ひょっとしたら木ばかり見ているんじゃないか。森全体を見てないんじゃないか。
俺は、そう考えてる(久しぶりに亀田パパキャラで)。
例えばその問題集。終わった単元をパラパラと見ながら知らないことを探し、自信がないところを捜し、あやふやなところを探り、もう一回もう一回って考えてみたりまとめてみたりしたのかな。あっちに知らないことがあれば再度確認し覚え、こっちに不慣れなものが見つかったら練習して身につける。
それとも一度解いたものだから、合格印ももらったところだからと、あまり見返すことはなかったのかな。
ただAだけをどんなに何回繰り返してみるよりも、例えばBやCと比べてみてはじめてAの意味が見えてくる、そういうことがあるんじゃないか。
1万円札がゴイスに見えるのは一万円札自体がすごいからでなく、他の紙幣と比べて換金率が高いからに過ぎない。千円札や百円札と比べる中で一万円札の価値が理解される。
一次元上のステージに登ってみたらいい。
そうしたらひとつ下のステージでの出来事の視界がよくなってくる。
茜色の色味を知るのに、赤、オレンジ、マンダリンオレンジ…と比べてみるというやり方だってあるんじゃないか。
近似する色にも目を向けてみる。
赤、朱色、スカーレット、ワインレッド、えんじ色、橙色、オレンジ・・・。
全体像がつかめるまで反復してみる。
茜色の感覚が自分なりの仕方でつかめるまで。
反復するうちに森の様子が見えてくる。
だんだんと頭の中に地図が出来てくる。
森の地図ははじめから頭の中にあるものではない。
頭の中にできてくるものなんだ。
迷いながら何度となく通るうちに。
森勉(大) 森勉(桃) 森勉(黄) 森勉(青) 森勉(赤と緑)