たまに(あくまでたまにだが)口数が少ない子が来る。
2、3回会ってもあまり話すことがない。ヴォクはすこしうれしい。なぜなら3年後か5年後かにいつか話をするようになったとして、何を話すのかが楽しみだから。
それに希少価値があるじゃん?
それまであまり話さないとして、筆談があるからとくに困らない。
たまに(あくまでたまにだが)たくさんしゃべる子が来る。
会う度になにか話をしてくれる。ヴォクはやっぱりすこしうれしい。
守秘義務を守るのが大変なので右から聞いて左に流したり、左から聞いて右に受け流したりして聞かなかったことにしておく。でもなぜだか忘れるということがない。数学の新しい公式はすぐに忘れるというのに。
人間にはたくさんゴイスな能力があるが、話を聞いたり話をしたりすることのできるこの能力もまた、道端に咲く草花やタマの髭みたいに不思議に満ちあふれている。
たまはあまり鳴かない。でも呼んだら尻尾を振って返事をしてくれる。そしてたまにニャーと鳴く(たまだけに)。