セルフラーニングの技法(6)
・惚れ込んだ本をいつものように読む。全文憶えてしまうくらいまで。
自分で材料を調達し自分で技を学ぶセルフラーニングにおいてどんな本、参考書問題集を読むかが成果に大きく影響する。
例えば、成功者の真似をする。志望校に進学している先輩が使っていた本を読む。
例えば、予備校のトップ講師の本に学ぶこともできる。講師教師の一部は授業や技術を(ときにその周辺までの研究の細部、ノートなどまで)作品にして市販している。詳しい本になってくると答案、解法のルールや定石のみならず「なぜそうして解くか」といった解法の必然性まで書いてある。
一流の現役プレイヤーの書物もあるだろう。
体系的な本になってくると個々の問題の解き方のみならずテーマに取り組む際の姿勢や呼吸法、判断基準の枠組みまでを伝えようとしている。判断の体系をまとめている本もある。
本にはりつき繰り返し読み返しているとまるで(映像)授業を観ているように肉声、息づかいまで聞こえてくるようだ。
絶版図書も、現役を引退している師の本も、そしてもちろんベストセラーの本もどれだって選ぶことができる。
え?絶版だとわからないところを著者に質問できないから困るって?
そうだね。
Youtubeを開けばわかりやすい講義がたくさん視聴できる。
知恵袋で質問すれば明解な解説がいっぱい見つかる。
しかし質問を著者以外の人にしたくない。
そしてその本の著者に直に聞くことができない。
ならば、寝かしたままずっと考えたらいいさ。
5年後違うことを考えているときにふとわかることだってあるさ。
古本屋や書店で同じテーマを読み比べれば他人にとってでなく自分にとっての価値がよくわかる。
あなたがどうしてもわからなかった問題をサクッと明快に記述してある参考書がもし書店にあればそれを買っておけばいい。その本はかゆいところにまで手が届いている。
入試で重要でないこと、周辺知識まで掲載している網羅性の高い書物を選ぶこともできる。
ふつうの本で2ページかける解説を10ページくらいかけて説明する詳しい本も。
ひとつの解法だけでなく別解1、別解2と複数の解法まで紹介しさらにそれぞれのメリットデメリット、普遍性、速さなど解法の選択まで書きおこしている書物に学ぶことも。自分の解き方がどうだったのかまで学ぶことができる。
毎年試験に出るような典型的古典的な重要問題だけをセレクトし、ただしインパクトを持って伝える本を選ぶこともできる。
学年関係なく3年先5年先に学校で習うようなことも噛み砕いて説明している本も。
教室通いだったらありえないことだがひとつの教科で2人の師の本に学ぶこともときにはできるだろう。ひとりの先生の書物を読破し、次に同じ(ような)派や違う(ような)技、型をもった先生の本を手にとることもできるかも。
まるで読書のように。
ひとつ上の進学先の学校の学生が使っている指定図書や副教材も。
市販図書なら大きな書店で実際に手にとって探せるのがいい。
絶版図書なら伝説的な名著を古本屋で見つけて入手できる。タイムスリップして師の教えを学ぶことができる。
結果、セルフラーニングを、師の言葉を頼りにしながら、進めることができる。
そうして徐々に自分なりの仕方が見えてくるものだ。
ところで本に読んで学習を進めることを継続するとひとつの能力が身につくことをご存知だろうか。
一回だけ読んで内容を頭に入れる能力、一回だけ聴いて内容を頭に入れる能力は情報処理能力として重要なものだ。
二回も言われるとしつこく感じるというくらいになりたいものだ。
水筒はもったの?
・・・
水筒はもったの?
二回言うことには問題があるし二回言われる方にも問題がある。
一回で聞き取れないならメモをとる工夫が必要だ。
一回読んで頭に入らないなら読書スピードを落とす工夫が必要だ。
二回読む三回読むのは自由だが一回でも読めるようになれるものならなりたい。
聞き返すことを癖にしていてはいけない。
一回聴いたときに集中して聴くようにしわからない部分だけを質問するようでありたい。
そんなどうでもいいことを思う。
入試問題の英語や国語の問題文はやたらに長くそのくせ試験時間が短い大学が私大には多い。
差をつけないとならないからというのもあろうが、ひとつに情報処理能力を見たいということもあるだろう。
だから速読速聴がとかく言われる。
人間は理解している限りにおいて読解速度を上げることはできるがたんに目を速く動かすだけで速読スキルが上がるということはない。
集中して読んでインプットして頭の中で考えてはじめて次の情報が頭に入るスペースが生まれるのであって、速聞きすれば勝手に脳に入ってくるものでないことは、たとえばDVDを高速にしすぎると何も入ってこなくなることを考えてみてもわかることだ。
それはどこか消化と似ている。
人は消化しないと次の食べ物が入らない。
速く読むこと、一回でとらえることはたしかに身につけたい能力の一つだが、その方法となると世に確立されたものがない。
普段の訓練が必要といえばそれまでだが、ではどうやって訓練するかと言えば返り読みせずに読んでみるとか理解できる限りのスピードにおいて速い遅いの差をつけながら読んでみるとかの意識的な訓練が必要だ。
たとえばわからないところに線を引きつつもそれはそれとして飛ばしてそれでも段落の内容はおさえにゆくといったやり方も考えられる。
読解において、要点をつかむということは必要なスキルとなる。
結局イイタイコトは何なのかをつかめていたら多少不明なところが残っても読み進める意味は継続できる。
そういうことなので要約、それもできるだけ短い言葉での要約のトレーニングを積むのはやり方としてわるくない。
話戻して好きな本を読みすすめるうちに読解力は上がる。
読解スピードもあがってくる。
本に学ぶことの副産物と言えるのだ。
そしてこの副産物の効果が入試本番では小さくない。