『英文解釈教室』といえば、その道のものなら誰もが知る名著である。
本当によくできた書物であると思う。今でも京都大学を受験するのなら、まずあの書物を読むのがよかろう。いや、東京大学の受験生であれ、やはり読んだほうがよいのではなかろうか。
解説中の例文をいったいどこから見つけてくるのだろうとずっと10年くらい思っていた。先に説明があるのでなく例文に説明がつくようなあの自然な流れをつくり出すには、タイミングよく例文をたくさん引っ張り出す引き出しが必要だろう。よくもまぁうまく引き出せるよなぁ~、って。何百も英文を読んで例文を探してるのかなぁ~、って。
それが『英語総合問題演習』のStep 3を読んですっかり謎が解けた。この人は働きについてあまりに深く着目しているため、どこからでも例を引いて来ることができるようだ。
たった22個の長文(短め)をそこまで使い倒すかというくらい縦横無尽に料理して見せてくれる。英文素材の旨味を十分に引き出す一流シェフだ。中級篇なら22個の英文を何度となく味わうことができる。はじめは1文ずつ意味に注意して味読し、今度は横に斜めに、同じ構造の文をひとつに集め、形や働きに注意しながら読むことができる。
『教室』の名こそないが、このシリーズはその続編であり、さらに深く英文を理解するためのひとつの道を示しているように思われる。一粒でたくさんおいしい。