これもまたコーチえのもとに習った練習術の話。
高地トレーニングをやらされた。
ぼくらは中学生なのだが社会人のもんげーうまい人を連れてきて乱打をお願いし、ぼくらの誰かが打ち勝つことはまずなかった。
乱打というのはただ相手のコート内4分の1の決まった範囲内にまっすぐに力任せで打ち合うことを言う。
乱打は20本30本連続で続くのは当たり前でときには40本50本以上も続くが結局社会人の方が打ち負かされることはまずなかった。
打ち負けるぼくらの方は交代するので交代せずに打ち続ける横綱はついに体力がいつか切れて何周目かには負けることがあった。
これは乱打に打ち負ける状態ではなく体力がなくなっているだけなのだがその時にたまたま乱打していた者はまるで自分が乱打でコーチに打ち勝ったような気分になり自信をつけたもんだ。
社会人の方は軸が決まり無駄な動きがなく何百球と打っても安定したスイングでぼくらをなぎ倒してくださった。あんなに小さなスイングでどうしてあんなに速い球が打てるのだろう。
相手の球が速ければ速いほどコーチは小さな動きで同じくらい速い球を打ち返してくる。ぼくらは乱打の間中、コーチのフォームを目に焼き付けた。
終わるとコーチは、えのもと監督と10分くらい何か話をして帰っていった。コーチと直接お話をしたことは、えのもと監督とお話をしたことがないのと同様一度もない。
その練習のことをコーチえのもとは「高地トレーニング」と呼んだ。
でもえのもと先生は練習後に話してくれた。
「練習はハードにやれば試合の方が楽をできる。練習は試合より速い球を受けなさい。練習では試合中より一歩前に出なさい。練習では試合中よりもっと強い球を狙いなさい。マラソン選手も高地出身の選手層は強いだろう? あれは本番より空気の薄い場所で練習しているから本番の方が楽だというのもあるぞ。」
そういう話があったのでやっぱり「高地トレーニング」と漢字をあてるのだろうなとぼくは勝手に解釈していた。
いくらハードな設定だからと言ってネット前のド至近距離からボレー練習の球出しをするあの練習だけは今思い出すだけでもこわい。
何回メガネにあたってメガネがずり落ち、鼻がいたくなったことか。
plus クラフト墨のほんとがフォントに好き。
この画像の文字なんて火を噴きそうな衝撃だぜ。
plus 今年の受験生
上向きベクトルのままほとんどの子は判定C、Dくらいのまま本番に突入していく。ヴォクの方でいいねだの悪いねだの言うことは何もない。目指すのは本人にしかできないこと。
「承知しました。」の一言しか言えない。
高地トレーニングでの勢いを重視している。本番の極限状況の中で自分の構え自分のスイングをすることができるか、その練習には普段3倍くらいの圧をかけて練習するのがいい。
調子を上向きのまま、力をためてためてーーーーをしている最中だ。
plus 大学入試数学にセンスなど関係ない。位置ベクトルがわからないという人に限って位置ベクトルってなあに?と聞くと答えが返ってこない。
位置のベクトルですか?
位置ベクトルの問題を解くときの考え方はいつだって1つしかない。そのたった1つのことを意識しないで考えようとしたって何をしたらいいのかがわからないのはもっともだ。
原点をOにとって点Aまでベクトルをとる。それが位置ベクトルだよ。
それで点Aはどこにあるのか世界中の人にかんたんに伝えることができるようになる。
原点からみて東に2、北に3って言えば世界でそこはもう1点しかないってことだからね。
数学でもっとも重要なことは定義をきちんと把握することで、そこに正しい勉強法がある。
plus 仕事中にピンポンという言葉を使っていたのだが、ピンポンパンライスのせいでどうしても2つ少なくなってしまう。ジャルジャルのせいだー。
plus コーチえのもとのダッシュ練習。
お前たちは前の県大会で優勝した。お前たちは次の県大会も優勝するための練習をしとる。
優勝するために練習しとるから優勝するのは当たり前だ。
今回は全試合負けなしで行くど。今までは天才に頼ってきたが次の試合はうちの3番手が相手の1番手にあたっても勝つ。そのための練習をしとる。いいな。ペアも全部入れ替えて1、2、3番手とも同じくらいのパワーにするからな。
はい。
でもそんなー。
チームの中で足を引っ張るのが目立って余計にやりにくいな。
まいったなー。
もやし体質のぼくは試合に出るのも嫌なのによりによって負けるなときたもんだ。
天才と組んで足を引っ張らないテニスができるわけもないし。
また変な夢を目指すなー。
内心で少しそう思ったが優勝しないはずはないしせっかくなら勝ち切ってみたいそう思った。
きつい練習の中でぼくはいつも1番後ろでついていくだけだった。
途中から足が絡まりはじめスピードの中でテンパってずっこける、それがぼくだった。
水をぶっかけられて目を覚ます、いつものパターンだった。
水をかけられると生き返った気がした。
水を飲ませてもらってもフラフラした足はなかなか戻らなかったがとにかく無我夢中で打って走った。
空振りがあってもでかい声を出してごまかした。
チームのダッシュスピードがあまりにも早いので自分の足が遅いおそいといつも思っていたがある日かけっこを走るといつのまにかぼくの足は速くなっていた。部活の外、ふつうの体育レベルで見るとかなり速い部類に自分が属しているようだった。
ありえないことが起きている。
まさか足が速くなるなんてことがあるわけがないのに。
信じられなかったぼくは陸上部へ行き見てもらった。
君はスタートだけものすごく速いようだよ。
はじめの30mなら誰にも負けないくらい速いぞ。
なんじゃそりゃー。
まさかの出来事であった。
テニスはダッシュと戻りの繰り返しで長い距離走ることがない。
ぼくの足はいつのまにかテニス足になっていたようで短い距離をすばやく移動する能力が抜群になっていた。
不思議な才能に恵まれたのかなんなのかよくわからないがテニスには向いていた。
ほなね。