「今回はさすがにやったーと思ってふたりでハイタッチしました。」
そのお便りをいただいて以来、ヴォクの夢はハイタッチを決めることだった。
ヴォクは人が集まるドーム的な歌い場(なんとかボックス?)で拍手したりハイタッチを決めたり、重い球を転がすドーム的なスポーツ(ボーリング)の途中で人とハイタッチしたりするのが嫌い。
なぜって、タッチした後にどんな顔をしたらいいかわかんないじゃん? な?
歌ってる時の顔をみられたくないよな?
とくにハイタッチは、生まれてこの方決めたことがなかった。あの時までは。
でも、そのお便りにあったテストの点数判明後のハイタッチの様子があまりにたのしそーーーに書かれてた。以来とらわれてた。
許されるなら、一度でいい、ハイタッチが決めたい。
ヴォクはイメトレする。
ハイタッチ、どんな感じなのだろう。
フォームがわからないなぁ。
原という方がよくお決めになってるグータッチとは角度が違う気がする。
力のモーメントも考慮して少しはす向かいから入るんかな。
タッチ時の静止摩擦力の問題も謎だ・・・
ハイタッチはやってみたらヴォクにもできた。
おもっていたより少しスムーズだったかもしれない。
これが夢にまで見たハイタッチかぁ。
喜びが3倍になる儀式だったのかぁ。
猛練習をして成果を上げる。
ハイタッチする。
悪くない。
あの子もまた確認テストに不合格だったことがただの一度もなかった。
負けず嫌いという言葉では表せない。
あの言葉の意味は自分に負けるのが嫌、そういう意味だったんだろうなー。
ヴォクは大学の入学式にも卒業式にも参加しなかった。
参加自由のものは基本参加しない。
見にくる人のために式はある。
見にくる人が校門で写真撮影するために式がある。
そしてハイタッチができるなら、そういう式に出るのもきっと楽しいのかもしれない。
入学式はハイタッチを決めるためにある。