中3
今日は中3、頭の中ではどうしてだかわからないが中3のままだ、彼の最後の日だった。
うなぎのようにニョロニョロっと登った。滝を登る鯉のようでもなく、ニョキニョキのたけのこのようでもなく、静かでしかし力強いうなぎのようなパワーで彼は駆け上がった。こんなときにまで偏差値だなんて考えたくもないが、偏差値にしていったいどれだけ上がったことだろう。10上がったか、15上がったか、いや上げた、彼は自力でそれを上昇させた。
公立高校が第一志望と聞いていた。だから悔しい。本人が悔しいに違いないが、ヴォクも悔しい。
もう一緒に勉強することはないかもしれない。あるかもしれないしないかもしれない。それは誰にもわからない。コーチエノモトと別れる日もそうだったが、なにかがおかしい。さびしくなる。いただいた手紙を見てもやはりさびしい。
しかし、彼には、独学独習姿勢がみについている。こと、学習面に関しては何も心配していない。それは小学生、中1、中2、中3とそうであったが、彼は自分で進む力を持っている。みにつけている。しみついている。
特待生として少人数クラスでがんばる、そう話していた。部活をバリバリ楽しんでほしいと願っていたが、おそらく3年間、彼は部活を捨て勉強漬けに自分を追い込むんじゃないか。
わからないことにぶちあたったら書物に調べ、それでもだめならネットで検索し、それでもダメなら学校の教員に質問し、そうしてなんとしてでも、突き進むことだろう。彼はそういう子だ。自分でできることは自分で最後までやってきた。自分でできるエリアをどんどん拡大し続けた。今後はその力をさらに伸ばして強くなってゆくことだろう。
ヴォクは7年前にタバコをやめた。5年前にお酒もやめた。それから、いっさい口にしないが、今日は、飲もう。芋を飲もう。抽選にあたってしまったから飲んでよと鹿児島の母から送られて、ままにしていた森伊蔵でも飲むしかない。
そうしてまた明日を迎えなければいけない。
さびしくなる。