(ヴォクの母校鶴丸の校訓のひとつに、文武両道があった。九州大会に旅立つ前の日だったろうか、校長先生は主将だったヴォクを昼休みに校長室に呼んでくださった。アツイ握手の後、ポケットから封筒を取り出しヴォクに手渡してくれた。そこには少しのお土産代と直筆のお手紙が入っていた。うれしかった。)
勉強の成果は時間の多寡に比例しない。
もちろん時間をかけたなら隅から隅まで丁寧に取り組むことができる。細かいところにまで手が届く。時間をたくさんたくさんかけて努力した人間の成績が上がらないわけがない。
勉強法についてあれこれ迷う時間があるなら、ただひたすら勉強した方がずっと早い。
県大会を勝ち進んでいる子たちが両立させている。80対20の法則ではないが、時間勝負に持ち込んだところで勝ち目はない。ならば選択と集中で最も重要な20パーセントの勉強課題に勉強時間の100パーセントをぶつけよう。
昨年の中3生。全国大会まで進んだ子は夏休み開けの模擬試験でガツンと伸びて結果を勝ち取った。夏休みに全国大会に出場したのに、勉強でも結果を出した。そのままの勢い、いや最後まで上り調子で第一志望校の合格を勝ち取っていた。
何が勝因だったと思う?
とある事情から受験体験記は結局誰にも書いてもらわなかったが、この子は話していた。
「まとめをしました」と。
なるほど文字通り、まとめの章のところまで大切に解いて、解きながら流れをつかんだのだろう。この子は嫌いだと言い切っていた科目においてさえ、たくさん点数をとるようになった。
まとめに限られた時間を全部を費やし、自分の知識をまとめ、自分の受験勉強をまとめ、気持ちをまとめた。一問を大切に解いていた。時間はどうせはじめから限られている。ならばこの一問を今ここでマスターする。そんな気持ちがノートのあらゆるページに垣間見えた。
私は陸上を全力でやった。そして全力で勉強も両立させた、と気持ちに整理をつけたんじゃないか。
しかも陸上で鍛えた集中力という名の、目には見えないがツオイ武器までがあったんじゃないか。
両立は口で言うほど容易いものではない。フィッツジェラルドは書いている。3度目だが紹介しよう。
「一流と二流を分ける試金石は、二つの相反する物事をできるかどうかの中にある。しかも同時に。」
両立させたい人へ。どうかあなたが両立のチャレンジに果敢に挑み続けますように…。
時間はかかるかもしれません。いつ芽が出るやも読めません。
いつかきっと芽が出るその日まで。